[159]第11回(最終回) 痔主と正座


発行日:2014/08/03
タイトル:第11回 痔主と正座
シリーズ名:正座のある生活
シリーズ番号:11

分類:電子書籍
販売形式:ダウンロード販売
ファイル形式:pdf
販売価格:100円

著者:上村 樹
イラスト:中理 柴

販売サイト
https://seiza.booth.pm/items/3131541

本文

○痔について。

 痔というのは細かく分けたら十種類以上もあります。中でも有名なのが、切れ痔、イボ痔、痔瘻(じろう)の三種類です。

 切れ痔というのは、硬い便を出す際のいきみによって肛門の辺りが切れてしまって出血と痛みがでるものです。排便時以外は痛みはそんなに強くなく、その代わりに痒みがでるのが特徴です。
 基本的には自然治癒しますが、硬い便が改善されなければ排便のたびに切れてしまいます。それを防止するためには便を柔らかくするために水分を多めに摂取するか、便を柔らかくする薬を服用するようにするようにし、便秘を改善するのが大事です。
 悪化してしまうと肛門括約筋という部分が痙攣しやすくなって、肛門が狭くなってしまい、結果として便秘になりやすくなってしまいます。肛門が狭くなる事を肛門狭窄といいますが、この治療には外科手術が行われる事があります。狭くなった肛門を手術で広げるものです。

 イボ痔は、肛門付近の静脈に瘤ができた状態です。原因は切れ痔と同じように排便時のいきみですが、イボ痔はいきみによって下半身にかかる圧力が増し、肛門の所の静脈が膨らんでそこの組織に瘤ができます。痛みは排便後にでてきます。また症状が進んでしまうと瘤が肛門の外側にでてきてしまい、激しい痛みを伴います。
 イボが肛門の内側にできるものを内痔核、外側にできるものを外痔核といって区別しています。内痔核の場合、排便のたびにイボが外に出てくる事もあります。指で押し込む事もできますが、立ったり歩いたりの動作でイボが出てきてしまうこともあり、そうなったら手術などの処置を行う必要があります。
 三種類の痔の中ではイボ痔の割合が一番多く、50%以上を占めています。
 イボ痔は排便するたびにいきむことによって悪化するため、切れ痔と同じように便秘を改善させる事が重要です。また内痔核では、外科手術が行われる事もあります。医療用の輪ゴムでイボの根本を縛ってとってしまう治療です。この方法では痛みもなくすぐに治りますが、何年かしたら再発してしまう可能性もあります。

 最後に痔瘻ですが、これは肛門の周りに穴が開いてしまいそこから膿がでてくるものです。この穴を、トンネルといいます。発熱してそこからどんどん膿がでてくるので、下着なども汚れてしまいます。更に1回トンネルが開いてしまうと、たえずそこから細菌が入ってしまう状態になってしまい、いくら治しても再発してしまいます。そして怖い事に、トンネルが一つではなくアリの巣状になってしまう場合もあります。これを複雑痔瘻といいます。
 イボ痔や切れ痔は手術以外でも治す事が可能ですが、痔瘻は手術以外では治す事はできません。アリの巣状になってしまう前に、なるべく早期に行う必要があります。
 手術は一般的には括約筋を傷つけずにトンネルを取り除く「括約筋温存手術」と括約筋ごとトンネルを取り除く「切開手術」と二通りあり、痔瘻の症状によって決められます。どちらにせよ早急な治療が必要とされるので、肛門部に腫れがあったり膿がでていたりなどのような症状を感じたら、すぐに受診するようにしましょう。

○日常生活において気をつけること。

 痔になっている人は、座り方に気を配るようにしましょう。あぐらなどは肛門に直接負担をかけてしまうので避けて、真ん中に穴が開いてる円座クッションを使用するようにするとラクです。
 本題でもある正座ですが、この座り方は直接はお尻に負担をかけない点ではいいですが、長時間続けていると鬱血してしまうためよくないです。お琴や茶道などの習い事をしている人に痔になる人が多い事からもそれがうかがえます。長時間座る事は避けて、できれば2時間おきくらいで動いて血流をよくするよう心がけましょう。
 正座をする上での注意点は、かかとの上にお尻が乗るような格好ではなく、かかとは大きく開いてお椀型にし、土踏まずにお尻を乗せるようにすることです。その方が痛みは出づらいので座りやすいです。正座をする時にかかとをあまり開けないという方は、足の甲を交差させるようにして重ねてみてください。その方がラクにかかとを開く事ができます。
 また正座ができないくらいに痛みが強い時は、無理をしないで肛門に圧力がかからないような姿勢をとるようにし、その際も、なるべく身体の血流をよくするために1~2時間ごとに姿勢を変えるようにしましょう。
 便秘はどの種類の痔も悪化させることがあるので、食物繊維を摂るなど便秘にならないような食習慣も大事です。
 トイレでもなるべくあまりいきまないようにし、肛門部はウオッシュレットを活用するなど衛生面にも気をつけましょう。

あわせて読みたい