掲載日:2009/01/16

やさしい正座入門学

第9話 正座と立て膝

著者そうな

風土が変われば→衣食住は変わる。衣食住が変われば→生活も変わる。そうして人は、その土地にあったものを組み立て上げていく。それが時を経て「文化」という「形」になっていくのだろうか……。


アンニョンハセヨ(안녕하세요=こんにちは)。寒い季節には、唐辛子の沢山入ったアツアツの韓国料理が食べたくなるのはよくある話しだ。もっとも、韓国の唐辛子は日本の唐辛子より辛くないそうだ。どうやら色は日本のよりも赤いようだが、ピリピリと辛い刺激だけではなく唐辛子本来の甘味が味わえるんだとか。果肉を美味しく味わえる唐辛子なんて、一度食べてみたいものである。

そんなお隣の国=韓国には、なにやら日本の正座のような座り方が沢山あるよう。幸いなことに、私の友人に韓国人の母親を持つ友人がいたので、今回はその方に正座のお話を伺うことにした。――いざ友人の待つ静岡へ!


私は彼女の家を訪ねるため、静岡県まで行ってきた。電車から外の景色を見ているだけで、静岡と東京の土地のカラーが全然違うことが分かる。ザックリ言うと、県を境に、吸う空気の味まで違うのだ。交通やその他いろいろの利便性を考えると、気軽にどっちがいいとは言えないが、この土地を行ったり来たりしていれば、いわゆる「美味しい空気」と「不味い空気」の判別がつくようになれる気がした。

風景を堪能している間に、電車は駅に着いた。そして、友人と合流し、早速彼女の母親が待っているという自宅へと案内してもらった。玄関を入り、廊下からチラリと見える居間に目をやると・・・・・・ easyseiza_9_s1

【出たな!いきなり高麗人参スナック!!!!!】


韓国といえば定番の高麗人参モノだが、改めて日本で現物を見ると、それだけでどこか異国の気分を味わえる。通りすがりに思わず写真を撮らせていただいた。友人の家に来ただけなのだが、これではまるで観光客だ。

その後、客間へと案内してもらい、白と紫のチマ・チョゴリを着たお母様にお会いした。沢山質問したのだが、お母様はその度にとても気さくに話してくれた。

私「韓国では、日本の膝をたたんで座る≪正座≫のようなものは、あるのですか?」
友人の母「日本のそういう正座のようなものは、韓国の文化には無いわね。でも、立て膝ならあるわよ」
私「立て膝ですか?」
友人母「そうそう、こんな感じでね、こう、両腕で片膝を抱え込むように座るのよ。ちょっとポーズやってみましょうか」
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(チマ・チョゴリと立膝)
私「なるほど!でも、足がどうなっているかはよく分かりませんね」
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(立膝の仕方)
私「ありがとうございます。こうなっているのですね。そういえば、チマ・チョゴリって上は和服みたいで、下はスカートみたいですね」
友人母「そうなのよね。だから立て膝ができるんじゃないかしら。和服だとね、あんまり足とか広げられないものね。私は、これが一番楽な姿勢だと思っているわ」
私「確かに、和服だと足を広げること自体が難しいですよね。だから日本の正座は、膝を折りたたんで座る座り方なのでしょうね」

ここで、「正座=その国特有のいわゆる正しい座り方」という意味で気になったので、この概念が正しいかどうか質問してみた。

私「じゃあ、韓国での《正座》は、この《立て膝》ということでしょうか」
友人の母「そうね、韓国だとこれが《正座》になるかしら」


おぉ!やっぱりそうか!日本のイメージだけで考えると、正座の名前と姿勢にズレが起きるが、やはり正しい座り方とは、その国によって違うのだ。だから和服が日常だった頃の日本の正しい座り方が、あの《膝をたたむ姿勢》で、韓国では《立て膝》が正座になるのだろう。言葉だけを考えているとワケが分からなくなってくるが、元を辿って《本質》を見てみれば理解は遠くない。「膝を折りたたむ」座り方は日本特有だろうが、《正座》という概念自体は他国にもあるのだから。

ちなみに、韓国の正座は男女差があり、「男性が胡座(あぐら)で、女性は老若に関わらず《片膝立ての座法》で、片方の膝は胡座の形で床に付け、片方の膝を立てて、尻を床につけ、立てた膝の上に両手を乗せる」のだそうだ。ここは日本と違う……と少し思いかけたが、男性が胡坐で女性が正座というのは少し前の日本でもあったはずだ。服装の意味もあるのだろうが、やはり他の国にも座り方には男女差があるようだ。

話しの最後に、立て膝は「どちらの膝を立てればいいのか」を訪ねたところ、「特に右足、左足の決まりはない」との事だった。ご自由にどうぞ、だ。


さて対談の後は、韓国の伝統的な服装チマ・チョゴリの説明をしてもらった。チマ・チョゴリは、《チマ》と《チョゴリ》に言葉が分かれていて、《チマ》が下に穿くもの、《チョゴリ》は上に羽織るものなのだそうだ。だから、文字で見るチマとチョゴリの間には「・」がついているのかと納得した。

そして、チマ・チョゴリは今でこそ色が豊富にあるが、昔は《チマ》は濃い色、《チョゴリ》はそれより明るい色を使うのが普通だったそうだ。つまり、お母様が装着しているこのカラフルなチマ・チョゴリは、現代版ということなのだ。

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(大人用チマ・チョゴリ)

昔とは変わって、色の文化が進んだということだろうか。チョゴリが鮮やかである。そして、白に紫。これは独特で日本にはあまりないセンスと言えるだろう。国が違うのだから、違って当然である。それにしても、チマ・チョゴリはお祝いの席などの正装というだけあって、日本の神職のそれと少し似た雰囲気がある。見ているだけで清廉な気持ちにさせてくれる。


そして、よりカラフルなこちらは友人が幼い頃に着たという子供用チマ・チョゴリだそうだ。

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(子供用チマ・チョゴリ)

可愛らしい色彩である。日本でも子供用はどれもカラフルなものばかりで、黒と白のモノクロカラーなんてものはほとんど目にしない。子供はやはり、このようなカラフルさがきっと嬉しい事だろう。幼稚園の頃、お遊戯会でカラフルなタンゴの衣装を身に着けて喜んでいた自分を思い出す。うむ、きっと気に入ったに違いない……。

この衣装には、肩ヒモ(サスペンダーのようなもの)がついている。動いても大丈夫なように、子供に優しい作りとなっているようだ。ちなみに、チマ・チョゴリのリボンの結び方は片結びだ。

余談だが、男性はパジ・チョゴリというズボンタイプのものがあり、これは夏服なのだそうだ。残念ながら、男性ものは友人宅には無い模様。チョゴリだけが言葉として変わらないので、スカートかズボンかでチマの部分が言葉が変わると考えていいだろう。


ここまでを考えると、チマ・チョゴリには、やはり立て膝が一番合っていると思う。実際に衣装を着て立て膝をして頂いた姿は、凛々しく、そして美しいとさえ思った。

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(立て膝 前方から)

文化とは古人の知恵の結晶であるからして、洗練されたものが残るのだな、としみじみと感じた。風土が変われば→衣食住は変わる。衣食住が変われば→生活も変わる。そうしていく内に、人はその土地にあったものを組み立て上げていく。自国を振り返れば、確かに日本もそうやって築き上げられてきた。これからも、どんどんそうして築き上げられていくのだろう。良いことも悪いことも全てを巻き込んで、新しい形へと成長していくのだろう。そして、その文化を作り上げているのは、他でもない自分たち一人一人なのだということを頭の片隅に持っておきたい。きっと日常が楽しくなるはずだ。

さて、日本をより深く知るには、今回のように外国の様子を知ることも必要である。実際に、韓国の生活の一部をみせてもらっただけでも考えさせられることは沢山あった。……ということで、よりグローバルな視野を広げるために、今日から外では、世界共通笑顔で挨拶!どうだろう?これがスムーズにできれば、突然海外に行くことがあったとしても、自然な笑顔で友好な関係が築けるかも!?

それでは、今回はこの辺で。カタカナで表すとなんだか分からない事になるけれど、トマンナヨ(또 만나요=また会いましょうね)!