[126]第4話 正座は構え


発行日:2008/07/24
タイトル:第4話 正座は構え
シリーズ名:やさしい正座入門学
シリーズ番号:4

分類:電子書籍
販売形式:ダウンロード販売
ファイル形式:pdf
販売価格:100円

著者:そうな
イラスト:あんやす

販売サイト
https://seiza.booth.pm/items/3177701

本文

 「武道での正座の使われ方は、どんなものだろうか……」
そんなことを思った私は、先日、道場へ取材に行ってきた。私の知人に、テコンドーを習っている女性がいる。彼女に道場を紹介してもらい、そこから本部にアポを取ったのだ。その名も、≪岡澤道場≫である。
 少し≪岡澤道場≫の紹介をしたいと思う。≪岡澤道場≫は、岡澤一(おかざわはじめ)さんが代表者である。彼の道場は、キックボクシング、テコンドー、マーシャルアーツ、レスリング、合気道、という、多種に渡る格闘技を扱っている。更に、少年部もあり、キッズレスリングやテコンドーを学べる。幼い頃より、礼儀と元気、勇気を教えてもらえるのだそうだ。これだけの格闘技教室を束ねる代表者とは、流石格闘家。タフなお方である。
 更に、こういうのもある。皆さんは、TOKIOの出演しているTV「鉄腕ダッシュ村」をご存知だろうか。何も無い山奥に、村おこしをするアレである。
 畑を耕すところから始め、家まで作る。なにより見過ごせないのが、年配の方の経験から教わる昔の知恵である。今では廃れてしまった人の技術や、素材本来のあり方・活かし方などの知恵も伝授してくれる。いわゆる、おばあちゃんの知恵袋であろうか。勿論、おじいちゃんでも問題無い。
 前置きが長くなったが、ホームページによると、実はここの道場は、格闘技の他にも「ダッシュ村」のような活動も行っているのである。その名も「湘南ダッシュ村」という名前で、野菜などを自分たちで栽培したりしているみたいだ。これについても、機会があればまた話しを聞いてみたいものである。

 さて、本題に入るとしよう。今回は合気道の取材をしてきた。武道なら全て正座があるのだろうと、テコンドーについて話しを聞くつもりでいた私だったが、そうではなかった。
岡澤代表によると、
「テコンドーは、元々韓国の武道なので、正座という習慣が無いんですよ」
とのことだった。なるほど、それは知らなかった。そもそものテコンドーの歴史の流れとしては、来日した韓国人が空手を学び→それを韓国に持ち帰り→テコンドーを創立したのだそうだ。ちなみに、「韓国」と聞いた時から、私の頭の片隅には、常にキムチが顔をのぞかせていた。そんな私は単純だろうか・・・・・・。
 申し遅れたが、今回、取材に応じて頂いたのは、代表の岡澤さんと合気道師範(4段)の時田さんであった。みなさんは、道場の代表と聞いてどんな人物を想像するだろうか。
私はこう思っていた。
「なんか難しい顔をした白いヒゲの老人」
ちなみに、髪も白髪で、肩までストレートに伸ばしてある。勿論、眉毛は目にかかるくらいがベストである。そして、彼は、素っ気無い態度で少し顔を向けこう言う。
「何が聞きたいのだ」
そして私は、おもむろにメモ帳とペンを構え、「合気道」と「正座」の事について尋ねようとする。すると、老人は、一層難しい顔をしてこう答えるのだ。
「お前に話すことなど、何も無い」
これは、大変な事になってしまいました。威厳はあるが、もうここまでくると、何が何だか分からないことになってくる。自分はなんで来てしまったのだろうか。実は取材場所を間違えているのではないか。いや、むしろそんな事より、この老人の風貌の方が問題だろうか。・・・・・・その後、老人は口を真一文字に結んで去る設定である。
 とまぁ、勝手な師範像は置いておいて、言うまでもないが実際の岡澤さんは上記とは全くの別人であった。とにかく気さくで配慮の行き届く方であった。恐れ多くも、上記のそのままの印象を伝えたところ、あははと笑い「じゃあ、もっと威厳を出した方がいいかな」とさえ冗談を飛ばしたほどである。
胴着→岡澤代表・黄色の洋服→合気道師範4段 ちなみに、掲載してある写真を見て欲しい。道場代表の彼は幾つに見えるだろうか。私の目で見る限り、20代後半に見えるのだが・・・・・・なんと、彼は今年で40歳である。不惑の歳である。これには驚いた。合気道師範の時田さんについては、見た目通りの好青年で、もう11年も合気道の師範をしているのだそうだ。彼もまた、人にとても気を遣う優しい心の持ち主であり、誠意を持って向かい合う性格をしていた。ふと思った。11年師範をしている・・・・・・?つまり、仮に20歳にして師範になったとして、それから11年・・・・・・。彼もまた、実年齢よりかなり若そうだ。年齢を尋ねなかったので、定かではないが。
 やはり、「夢」と「誇り」をもって道を歩んでいる人間は、輝いているし、何より人に優しいな・・・・・・。それが、私の率直な感想である。それはそうと、こんな規模の広い道場の創立者が、こんなに若い方だとは、私には想像もつかなかった。そんな岡澤さんと時田さんの歴史・はたまた武道に込める「夢」には、また後日触れてみたいと思う。

 だいぶ遠回りをしてしまったが、正座の話しに戻ろうかと思う。私はここで、「合気道」と「正座」との面白い関わりを聞いた。以下は、その時の話しをまとめたものである。
時田:「合気道は、《姿勢》を凄く大切にするんです。素直な《心》も大事ですよ。そしてですね、合気道には、《構え》というものがあるんです。その姿勢を崩さないようにしながら、そのまま正座をする。そして、また構えに戻る」
岡澤:「構えって言うのは……こう、立って構えて→正座→そして、また立って構え(その場で見本)」
私:「ほ~。(ぁ、こ、これは!むしろ、まるっきり正座ではないか!!)」
岡澤:「まぁ、そういう《正座法》というものがあるんです。つまり《正座が構え》って事ですね」

なるほど!《正座が構え》とは、何とも面白い武術ではないだろうか。その後、練習風景を見学させてもらったが、そこにも正座が幾つか存在した。まず、何事も準備運動が肝心である。約20分間準備運動をするのだが、その時に使われた正座が、これである。《正座法》、《膝行法》。《正座法》に関しては、写真をつけたので、そちらを見れば一目瞭然だろう。ちなみにモデルは合気道師範の時田さんである。《膝行法》に関しては、礼儀作法の膝行・膝退と同じ、膝で進む練習である。
構えから正座法へ変化する様子 上記からも分かるように、殆どの武道は、礼儀作法を重んじている。「道」とつくものがそうなのか、はたまた、礼儀作法を大事にする事が「道」なのかは分からないが、とにかく正座というものは礼儀作法の面で重宝されているように思える。この道場、ちびっ子から女性・男性・外国の方まで、様々な人が武道に真剣に取り組んでいる。何を想って、何のために習得しようとしているのかは、様々だろう。しかし、その練習をしている態度、表情は、みんな活き活きと充実しているようであった。

 さて、この岡澤道場、「運動不足解消」から「真剣な武道習得」まで、誰でも一日体験からやってみよう、とのこと。
A:「もう、座ってるだけの一人の正座は飽きたよ~」
B:「わたくし、正座もできるおしとやかな、でも、強い女性になりたいのです!」
C:「某の正座の道は、きっと武道にあり!」
 そんな正座人生に、武道の道を取り入れるのも、悪くないかもしれない。メタボリックシンドロームも流行っている中、ここは一つ、引き締まった体で正座をするのも、粋なことではないか。【武道で健康と高い精神を手に入れろ!】なーんてな。とりあえず、そんな事を語っている私こそ、この道場で鍛えてもらうべきである。

取材場所:岡澤道場本部(大船)http://www.itf-shonan.com/

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