[132]第10話 素敵な 和む 美しい正座椅子


発行日:2009/03/01
タイトル:第10話 素敵な 和む 美しい正座椅子
シリーズ名:やさしい正座入門学
シリーズ番号:10

分類:電子書籍
販売形式:ダウンロード販売
ファイル形式:pdf
販売価格:100円

著者:そうな
イラスト:あんやす

販売サイト
https://seiza.booth.pm/items/3177712

本文

 日本の行事に、正座は欠かせない。しかし、正直なところ、私自身は正座が苦手である。確かに、正座をすると背筋が伸び心が引き締まる気がするのだが、だからといって長時間続けられるかは、また別の問題だ。正座をしても、10分ほどで足に違和感を感じてしまう。たまに「お、長く正座できてるんじゃないか」と思うこともあるが、立ち上がった拍子に潜在していたシビレが、例えようの無い感覚で足を襲ってくる。
 そこでだ、前から気になっていたものがある。それは、『正座椅子』である。大体お尻より一回り小さく、「なんだ、これは……」と言ってしまうほど、とても不思議な形である。だって、四角だの丸だのの形があり、しかも高さ20cmだったりと妙に低い。一般的に考えるなら、こんなにも低いものに腰をかける方が、むしろ座りにくいものだ。
 それに興味を抱いてからというもの、家具屋や雑貨屋などを覗くたびに正座椅子らしきものが頻繁に目に飛び込んでくるようになった。実に様々な素材や形があるのだ。思えば、私の持っていたキノコの椅子も、いわゆる『正座椅子』であった。つまり正座椅子は、今や和の家具店だけではなく、日本の雑貨店等にも普及しているのである。

 さて、ここに一つの正座椅子がある。
全体図 綺麗な色、整った形である。私はもう、これが正座椅子だと知って使用しているが、未だに認知度は高い方ではないため、大抵はどう使用するのか知らない人の方が多いのではないだろうか。「いったいどのような反応が返ってくるのか楽しみだ」とニヤニヤしながら、身の回りの人に突撃取材してみることにした。

 誰かいないかなと探していたら、ちょうど父親が居間でお茶を飲んでいたので、早速持ってきて聞いてみた。
私「これ、なんだと思う?」
父「椅子かな?」
なるほど、椅子だということは分かるようだ。(こんなに低いのに椅子だと思った理由は、多分クッションがついているからだろう。クッションがついていなかったら、また別の答えが返ってきていたかもしれない。)
私「そうそう。正座椅子っていうんだよ。ちょっと座ってみない?」
父「ふぅん・・・・・・お父さんはいいよ・・・・・・」
私「ぇえー!なんでー、座ろうよー」
父「お父さん、正座は苦手なんだよ」
 私はピンと来た。《正座が苦手な人にお勧めなのが、正座椅子》なのだから、これはまさに座って欲しいものである。
私「大丈夫!これね、正座が楽になるんだよ!座ろう座ろう、はい!(差し出す)」
父「えー、じゃあ・・・・・・ちょっとだけ座るか・・・・・・」
 父は、渋りながらもなんとか承諾してくれた。そして、座面の下にスネを入れ込む位置を教え、座ってもらった。すると、
父「おりょ!座りやすいね」
 父は驚きすぎて「おりょ!」なんて変な声を出していたが、この足の圧迫感の無さ、クッションの適度な柔らかさには、私も本当に驚いた。まさに「おりょ!」である。そして極めつけは、この傾き加減だ。分かりやすく写真で見てみよう。
クッション無し→あり・真横図 まっすぐ固定された椅子とは違い、少し傾いていることによって、上半身に自由がきくのだ。また、前方後方にスイングが効くため、お尻をふっと持ち上げるような動作をすることもできる。このしっかり作りこまれた点は、雑貨店のリーズナブルな正座椅子と大きく異なる。
 その後も父は暫く座っており、何かと新しい発見をしたようにはしゃいでいるのであった。そして、
父「これの記事の題名は、《正座の友達》だね!!」
勝手につけられた。あまり頻繁に接することのなかった父であったが、発想の豊かな楽しい人であるようだ……と、正座椅子を通して実感したひと時であった。

 後日、今度は友人を自宅に招いて正座椅子を見てもらった。
私「ねぇねぇ、これなーん」
友人「あ、正座椅子だー」
 やられた。「なーんだ?」と言い切る前に答えられてしまうとは。出鼻をくじかれるとは、こういう事なのだとしみじみ実感。
私「あらら~、知ってたんだね」
友人「うん。うち、法事の時に使うお寺で、よくこれ見かけるよ」
私「え?お寺に置いてあるの?」
友人「うん、結構使ってる人いるみたい。うちは使ったことないけど」
なるほどー。正座が必須なお寺では、現代は普及している模様。ちなみに私の家を担当してくれているお寺では、残念ながら正座椅子ではなくてパイプ椅子である。
正座椅子に座っている友人友人「でも何かこれ、面白い形だね」
正座椅子を実際に見たことのある友人が「面白い形」というくらいのだから、これは特殊な方なのだろう。
私「そうなの?どこら辺?」
友人「なんかクッションついてるし、大き目だし、デザインが違う」
つまり、クッションがついている正座椅子は、結構少ないということだろうか。そういえば、私も店で見かける正座椅子で、このようにクッションがついているものにはほとんどお目にかかったことがない。
ゆったりしながら背筋もピン! 大きさも、四つ折りの新聞紙より少し大きめのサイズだから、上半身の安定が良い。更に、その大きさとクッションにより、しっかりと支えられている気がして気持ちにも安定感がある。そして、デザイン。確かに、ごく普通の正座椅子のほとんどには、クッションがついていないように思える。そして、和風感が漂っているものが多い。
 しかしこれは、クッションの効果なのか、デザインの効果なのか、はたまた木のしっかりした材質の効果なのか、和風でも洋風でもしっかりと合う。実際、カーペットの上で使っていたが、部屋のインテリアのバランスと比較しても、全然違和感がないのだ。木の色や質感からは、むしろ高級感さえ漂ってくる。
友人「和洋折衷のデザインなんだね。家にあるなんていいなぁ」
「和洋折衷のデザイン」か。まさにその通りである。

 最後に、母に見てもらった。
私「ねぇねぇ、お母さん」
母「あ、正座椅子ね」
椅子を見るなりこの発言とは・・・・・・流石、「母」である。
母「へぇー、綺麗なデザインじゃない」
私「こうやって座るんだってさ(使い方を一通り説明)」
母「へぇー、座りやすそうね。アイロンがけが楽そう」
 まさに今気づいたが、これは主婦の味方かもしれない。アイロンがけや縫物をしたりと座って家事をすることの多い主婦には、まさにうってつけの道具ではなかろうか。
 私がうなづいていると、母はまた感想を述べてくれた。
母「座面が広くて、安定感がいいわね。それに、前後にスイングするから、体が自由に動くわねぇ」

 確かに、揺りかごのような形なので、前や後ろに結構融通がきく。洋風のあの前後に揺れる椅子、ロッキングチェアーに似たところがあるのだ。座って何となく揺れているだけでも楽しいが、ここまで融通がきくとなると、前のめりになるカルタや書道にも適しているかもしれない。
母「アイロンかける時は、結構長く座ってるのよ。押してかける時なんかは、体重をかけるから、このスイングが丁度いいね」
私「確かに、このスイングが押すのを手伝ってくれるね」
母「洗濯物をたたむ時もいいよね。取る時は身を乗り出すし、たたむ時はそのまま膝の上でたたむし、この一連の動作には、本当に丁度いいね」
 母は本当によく喋ってくれる。スイングに注目するとは、流石主婦歴が長いだけある。
「これを母に譲ったら喜ぶかな」
なんて考えが頭をよぎり始めた矢先……――
母「あなたが使わない時は、お母さんに使わせてね」
……。どうやら、譲る必要は無いようである。

 この正座椅子は、金山興産有限会社の商品《素和美(すわび)》である。どうしてクッションがついていたり、前後にスイングしたりと独特な正座椅子を作ったのか、《素和美》を開発した山口さんは、こう言っている。「素和美の原型は、もともと腰痛に悩んでいた私が、その原因と思われる猫背を矯正するために思いついたものです。底板を湾曲させる事で、座面を個人の体格に合わせて前傾させることが、素和美の特徴です」特に設計で悩んだのは、
1. 座面の前傾角度をどのくらいの範囲におさめるか
2. 底の形状
3. 正座をした時に足の先が開かないようにすること
4. 安定性のバランス
5. 全体に天然ならではの板を使うべきか
6. クッションの厚さ
なのだそうだ。特に、6番目のクッションの厚さでは、厚いと座高が高くなり、薄いと見た目が貧弱にならないかなども頭を悩ませたそうだ。山口さんは、このポイントの他にも日常に組み込まれる正座椅子を作りたいと、和洋折衷を心がけたのだそうだ。そのお陰で、実に場所を限定しない作品になっている。
 実際に、この商品を購入した人の声を教えてもらったら、ほとんどの人が、《毎日1時間以上使用》しているとの事であった。このような正座椅子があるからこそ、正座を一時間以上も苦もなく続けられるのだろうな。山口さんは、そういう声にとても喜んでいた。作り手として、「毎日使っている」という言葉ほど嬉しいものはないと思う。それは、悩みに悩んで、それだけ心を込めて作ったからなのだろう。

 気になる人ぞ気になると思うので、ここで、商品を説明しようと思う。
寸法32cm×26cm×12cmのタイプAの椅子とクッション(薄青)
 まず、この正座椅子には、AタイプとBタイプがある。座面の水平時の高さが12cmなのがAタイプ、13cmなのがBタイプだ。体型に応じて座面が対応するという事だが、女性は一般的にAタイプがお勧めだそうだ。
 そして、嬉しいことにクッションの色は薄青、薄緑、アイボリー(柔らかな象牙のような白色)の3種類がある。ちなみに、この高級感を出している表面材は《ならの木》である。
 そして、この商品と出会える場所だが、《原価に近い価格でお届けしたい》という事で、インターネットによる通販のみにしてあるとのことだった。こういうところにも気を遣ってくれるのは、買い手としても嬉しい事だ。
 価格の方は、Aタイプ8300円、Bタイプ8900円、専用クッションABとも2200円で、いずれも消費税・送料込みのサービスとなっている。

 最後に、山口さんから一言いただきました。「毎日御使用頂いても永く使用頂けるよう、硬い木材を素材とし、木ねじで堅牢に組み立ててあります」
 腰痛のある方はもちろんのこと、高級感があるので親へのプレゼントや正座を長くする人など、誰に送っても喜ばれる一品である。何しろ、大概のインテリアと調和するので、ポツリと部屋に取り残されたような異質感もない。
 さて、少しでも興味が湧いたら、《素和美》のホームページを覗いてみてはいかがだろうか。あなたの日常に、《正座椅子素和美》が一役かってくれるかもしれない!

取材協力:金山興産有限会社 素和美
     https://suwabi.jp/

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