[170]第11回 残暑にうなぎ!


発行日:2014/11/16
タイトル:第11回 残暑にうなぎ!
シリーズ名:とりあえず座れ
シリーズ番号:11

分類:電子書籍
販売形式:ダウンロード販売
ファイル形式:pdf
販売価格:100円

著者:かねしろさく
イラスト:林 加奈子

販売サイト
https://seiza.booth.pm/items/3131621

本文

 まだまだ残暑も厳しい今日この頃ですが、皆さんはこの夏いかがおすごしでしたか。
 私は夏のあいだはとにかく忙しくて、先日うっかり熱中症で倒れてしまいました。幸い、三十分ほど身体を冷やしながら横になったら治る程度の軽いものだったけれど。
 怖いことに、具合が悪い、と思ってから倒れるまでに三分もかからなかった。少し休めるところに移動しようとした矢先に倒れ、そのまま身動きがとれなくなってしまった。運良く周囲の人たちが助けてくれたけど、一人のときに倒れていたらと思うと冷や汗ものだ。
 驚いたのは、その日は夏とはいえ比較的涼しい日だったことである。「まだ我慢できるかな」というくらいの暑さでも熱中症に陥る危険はあるようだ。たとえ九月になっても油断はできない。

 この夏の疲れが一気に出たのかしら。体力をつけるためにもここはひとつ、土用の丑の日に食べ損ねたうなぎを食べにいこうじゃないか。
 あいかわらずお高いうなぎ……。だけど最近贅沢してなかったし! 残暑を乗り切るためにも! 奮発しようじゃないか!
 思い立ったら早いわたしである。さっそく行ってみたのは、くつろげるお座敷が素敵な浅草のうなぎ屋さん。
 うな重大盛とビールを注文。正座しながら飲むビールもなかなかオツですね。つい勢いで大盛にしちゃったけど食べきれるかしら、なんて心配はいらなかった。ぺろりと完食。疲れていても食欲は健在である。
 子供の頃はうなぎの小骨が苦手であまり食べなかった。国産うなぎが減っていることも知らなかったし、体力が有り余っていた子供時代には「精力がつく」という概念が理解できていなかったせいか、うなぎのありがたみもよくわからなかったのかも。しかし、ありがたみがよくわかった今では大好物である。
 しかし自分へのご褒美にうなぎ屋へ行くなんてわたしも大人になったなぁ。しみじみとビールを飲む。わたしは今年二十五歳、ん、二十五歳って四捨五入したら三十だから、もしかしてアラサー? なんということだ!
 熱中症で倒れた件もあるし。もう自分の体力を過信してはいけないということだろうか。認めがたい……。しかし事実である。これからは用心しなくては。

 自分で体験してみて改めてわかったけど、みんなで何かをしている途中で「具合が悪い」と言い出すのはなかなか難しいことだ。たとえばみんなが楽しみにしていたレジャーや、休みが取れそうにない忙しい仕事中などはとくに。
 悪い意味で空気を読んでしまうというか。水をさしてはいけないと思って我慢しようとする人も少なくないだろう。なにも倒れるまで我慢しなくても、と呆れるかもしれないが。
 だけどやっぱり、つらいときにつらいと言うのは健康面でもコミュニケーション面でも重要なことだと思う……そんなことを同行の友人に話していたら、
「じゃあ、足が痺れてきたからそろそろ足を崩して座ろうか」
 と提案された。
 そうですね、足は痺れるものですから。正座も無理せずゆるーく楽しみましょう。

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