正座双六


掲載日:2002/05/21
投稿者:yossie

 小学生時代、クラスの担任から、宿題忘れのお目付け役を言い渡された。
 「おう、俺は職員会議があるから奴らを見張っててくれ!まあ、適当な時間にかえしていいからな」

 ふと見ると、教室の後ろに正座させられている男の子たちが10人ほど。

 みはれっていわれてもなあ・・・ただ座ってるだけの男の子たちを見てるだけってつまんないの・・・

 そう思った私は、ゲームを思い立った。
 教室を細かくエリアわけし、双六をすることにした。「3こま進む」とか「スタートにもどる」とかルールをつくる。さいころはない。どうやって進むかというと、より美しく、立派に正座したものにポイントをあたえ、そのぶんこまを進んでいくというもの。ゴールに到達したものから帰宅するのである。
 ・・・もちろん、ポイントは私の独断と偏見である。(なんてやつだ)

 こんなあほな企画であったが、教室は異様な熱気に包まれた。ふだんろくなことをしていないやんちゃな男の子たちが一心不乱に正座をするのである。実に美しい姿であった。
 そのうち、形はみな美しくなったので、「その形を一分間維持」とか条件をさらに厳しくしていった。
 それにしても、こんな無茶なやりかたにがむしゃらについてくる10人の男の子たち。まさに正座の魔力にかかったかのようであった。やがてゴールできるものも現れたが、なにを思ったか自主的にスタートに戻る始末。
 それは担任が帰ってくる時間まで一人と帰宅することなく延々と続いていたのである。
 その異様な光景に絶句してしまったことは言うまでもない。

 「よ~し!明日もやるぞ!」
 なぜか皆やる気に燃えていた。そして、さらに人数を増し、「正座双六」は一週間にもわたって繰り広げられたのである。

 正座、おそるべし。

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