第8回 日本伝統の座りかたって何?

掲載日2016/03/13
著者橋詰 康子
イラスト中理 柴
 畳の上に座るとき、幼いころから正座を強いられてきた、という方は少なくないと思います。テレビや本で見ても、畳の上では正座をしている人は圧倒的に多いですよね。しかし、それがなぜか、といわれると、本当に理由をこたえることができる人は、あまり多くはないと思います。「それが昔からの決まりだからよ」と、はぐらかされたという人もいるでしょう。では、かしこまった席で正座をする、という行為が、いつから「昔からの決まり」になったのか?「昔から」というのはいつからなのか? 今回は、そんな日本の伝統の座り方についてご紹介していきます。

 まず古代、中世と呼ばれる、平安、鎌倉、室町時代では、人々が正座という形でかしこまって座っていた記録はありません。むしろ、あぐらをかいていたり、立膝でくつろぐ人の姿が、絵巻で多く描かれています。それは、民衆だけでなく、武士、僧侶、公家など、さまざまな身分の人々が正座を「正しい座り方」と思うことなく、男性は男性らしく、女性は女性らしく座っていた記録が残されています。
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 江戸時代初めまでは、正座はあまり人になじみのない座りかたでしたが、幕末、明治時代の写真では、女性が正座をして座っている姿が多くみられるようになります。少なくても一般女性の中では、このころもう正座は確立した座りかただったということになります。

 では、この間に何が起こったのかというと、以前にも紹介した、徳川幕府が制定した武家儀礼がきっかけでした。これによって、「坐作進退」という、座りかたから立ち振る舞いまでの作法が厳格に定められたのです。そういった武家儀礼が、階級が上の上級武士に広がっていったことで、庶民にも広がっていったことになります。しかし、意外にも先に正座が庶民まで広がったのは、女性の方でした。
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 理由として挙げられるのが、幕府による反物に関する禁令です。幕府は反物の寸法を改定し、その幅を狭めたため、それまで着物の下で自由に足を崩せていた女性も、足を閉じ正座せざるを得なくなったのです。足を崩そうものなら、足がみだらに出てしまい、はしたなく見えてしまうため、女性の方が当時必死で正座をしていたに違いないでしょう。

 ちなみに当時は「正座」という単語は流通しておらす、「つくばう」、「端座」、「かしこまる」などといった言葉で呼ばれていました。「かしこまる」などは、今でも使う言葉で、なじみ深い言葉でもあります。

 いかがでしたか? 正座は何も、昔々古代から育まれてきた文化という訳ではありません。人々が、正座をしてきた歴史は、江戸時代後期から始まるのです。そういった意味で、昔の人の姿絵や絵巻を見ても、面白いかもしれません。ぜひ、参考にしてみてください。


参考文献
矢田部英正(2011)『日本人の坐りかた』集英社新書.

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