[157]第9回 鎮痛剤と正座


発行日:2013/08/05
タイトル:第9回 鎮痛剤と正座
シリーズ名:正座のある生活
シリーズ番号:9

分類:電子書籍
販売形式:ダウンロード販売
ファイル形式:pdf
販売価格:100円

著者:上村 樹
イラスト:中理 柴

販売サイト
https://seiza.booth.pm/items/3131536

本文

 長時間正座をしていると、足に痛みが出てくる事があります。そういう時に、鎮痛剤を飲んでみるのも一つの手かも知れません。
 では、鎮痛剤を飲むとどの程度長い間正座をしていられるようになるでしょうか……?
 その前に、「痛み」というものがどのようにして発生するか、そして鎮痛剤というのがどのような仕組みで効果を発現させるのかについて触れてみます。

☆痛みのを感じるメカニズム
 まず、細胞がなんらかの刺激によって壊れ、「アラキドン酸カスケード」と呼ばれる課程を経て体内でプロスタグランジンという物質が生成されます。
 このプロスタグランジンは、いわゆる「痛み・腫れ・熱」などの炎症を引き起こします。さらに同時に、血漿からブラジキニンという物質が遊離されます。これは最強の発痛物質と呼ばれるもので、プロスタグランジンにはこのブラジキニンの発痛作用を強める作用もあります。
 このように、なんらかの刺激により末梢でプロスタグランジンやブラジキニンが作られ、それが神経を伝わって脳に到達し、「痛み」というものを感じるのです。


☆鎮痛剤について
 鎮痛剤の種類は大きく分けて三種類あります。
 一つ目は、鎮痛剤としては広く使われているNSAIDs(エヌセイズ)と呼ばれるもので、プロスタグランジンの生成を阻害して痛みを抑える作用があります。
 二つ目として、脳が痛みを感じた時に、逆に痛みの伝導を抑える指令が脳から発されるのですが、それを増強させる事により痛みを感じづらくさせる作用を持つ薬です。これは腫れをともなっている時や、激しい痛みなどにはあまり効果がなく、慢性的な痛みや帯状疱疹の後の神経痛などを抑えるのに使われます。
 最後にオピオイドと呼ばれる鎮痛剤です。これは、痛みの信号が脳に伝導されるのを抑える作用があります。鎮痛剤の中では効果が強いとされており、癌の疼痛(痛み)などを和らげるために使われる場合が多いです。
 副作用としては、NSAIDsでは胃障害が現れる事があり、その理由から胃潰瘍の人にはあまり使われません。プロスタグランジンは胃の中では常に作られているもので、胃を保護する役割を持っているので、NSAIDsを使うと胃で作られているプロスタグランジンの生成も抑制されてしまい、胃を荒らす事があるのです。それを防止するために、胃の粘膜を増強する働きを持つ薬を同時に飲んだりします。
 二つ目の薬には、強い作用もない反面であまり目立った副作用はありません。
 オピオイドの副作用は多く、消化器系では吐き気や嘔吐がでる事もありますし、泌尿器系では尿閉(尿が出づらくなること)などがでる事もあります。また呼吸を抑制してしまう事もあるので呼吸管理をしっかりする事も必要になってきます。気管支喘息の症状を悪化させてしまう場合もあります。オピオイドは作用が強い分だけ副作用も多種にわたっているので、しっかりとした専門医による管理の下で使われる事が必要になってきます。
 以上が鎮痛剤の飲み薬についての説明です。

 飲み薬の他にも、鎮痛剤には塗り薬がありますし、湿布などの貼り薬も鎮痛剤のうちの一つです。塗り薬や貼り薬などは飲み薬と違って全身には作用が回らないため、かぶれ以外には副作用が滅多に出ないのが利点です。
 しかし、痛みの場所が多い場合にはたくさん塗ったり貼ったりしないといけないので大変ですし、あまりたくさん使いすぎると腎臓に負担がかかり、人によっては尿が出づらくなる事があります。1日に10枚以上の湿布を使った場合に、そういった副作用の報告があったとのことです。
 正座をする場合に使う場合はそんなに使う必要はないので、飲み薬よりも塗り薬や貼り薬の方が副作用も少なく使いやすいでしょう。

☆実験と結果について
 というわけで、試しに湿布を貼ったら正座ができる時間が増えるか、実験してみました。
 まずは、湿布をしない状態で畳で正座をした所、18分ほどのタイムでした。
 次、二回目の実験は次の日に行いました。そして湿布をしての正座にチャレンジするにあたって、どこに湿布を貼ったら効果的か考えてみたところ、すねの下から足の甲にかけてが主に痛くなったので両方の足の甲の辺りに湿布を各一枚貼りました。記録を測った所、21分。そんなに記録は伸びず……。


☆考察
 湿布をしたときとしないときでは、残念ながらだいたい3分ほどの差しかでませんでした。
 どうして思ったほどの結果がでなかったのかというと、恐らく、正座を長時間やるに当たっての障害が「足の痛み」ではなく、長時間じっとしてる事のによる身体の疲れが主だったからと考えられます。
 余談ですが、母の妹はお琴の先生で、必要であれば一日中でも正座をしていられるだろうとのことでした(母談)。やはりプロの方は違いますね。

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