[155]第7回 正座ができなくなる病気


発行日:2012/08/04
タイトル:第7回 正座ができなくなる病気
シリーズ名:正座のある生活
シリーズ番号:7

分類:電子書籍
販売形式:ダウンロード販売
ファイル形式:pdf
販売価格:100円

著者:上村 樹
イラスト:中理 柴

販売サイト
https://seiza.booth.pm/items/3131533

本文

 足腰の病気がある人は、正座は負担となるのでできなくなることもあります。
 以下は代表的な疾患としてご紹介します。

○リウマチ・関節炎
 リウマチは筋肉や骨、関節が痛くなる疾患ですが、正座ができなくなってしまうのは主に関節リウマチと呼ばれるものです。
 関節リウマチというのは、朝に指の関節がこわばって動かしにくくなる、という症状を始めとして、それが徐々に全身の関節に及んでいきます。


 関節リウマチは自己免疫性疾患と呼ばれ、なんらかの刺激により免疫が過剰に起こり、自分自身の体をも攻撃してしまうというものです。
 けれど、なぜそのような過敏な免疫反応が起こってしまうかはまだ不明です。
 首や肩などの関節に炎症が起きて、疼痛と呼ばれる痛みが発生します。また炎症がひどくなると、今度は骨の破壊・変形が起きます。
 膝の関節に症状がでた場合、膝に痺れと痛みがでて正座ができない原因となります。骨の破壊や変形が起きてしまったら完全に治癒することはできなくなるので、早めに治療することが大事です。
 関節リウマチは、30歳などの若い女性でも発症することがあります。「朝のこわばり」などの初期症状を見逃さないようにしましょう。
 膝が痛くて正座ができない、というのが受診のきっかけになることもあります。関節リウマチかどうかの検査では、関節の状態を診る以外に、血液検査も行われ、リウマチ因子や炎症反応(CRP)などの値を調べます。
 関節リウマチであることが確定したら、治療に移ります。治療は、まず痛みや炎症を抑えるための「抗炎症鎮痛剤」、病気の進行を遅らせるための「抗リウマチ薬」、炎症を強く抑える「ステロイド剤」などが主に用いられます。薬で改善されない場合は、手術で人工関節を入れたりもします。
 治療がうまくいった場合は、痛みがとれて正座ができるようになります。

○ガングリオン
 ガングリオンというのは関節にできた良性の腫瘍で、ポコンとした瘤ができ、痛みがなければ放っておいても問題はありません。
 中にはゼリー状のものが入っているのですが、ブヨブヨしてるわけではなくほとんどが硬くなっています。
 関節のあちこちにできる可能性があり、自然に小さくなる場合もありますが、病院で注射をして中を抜くこともできます。ただこの場合には再発の可能性もあるので、あまりにも再発が多い場合には手術を行ったりもします。
 今注目されてる術式は、低出力半導体レーザーを使用した方法です。これはレーザーを当てるだけなので体を傷つけることもなく、副作用も少ない方法です。やり方は、一ヶ月から二ヶ月ほど毎日病院に通って、レーザーを照射します。費用は健康保険が適応になるので一回につき、500円程度です。
 ガングリオンが足首にできると正座に支障をきたします。原因はまだ不明とされていますが、関節を酷使して炎症が慢性化した場合にできやすいとも言われています。

○変形性関節症
 これにかかって正座ができなくなるのは、ちょうど膝の裏のところが痛くなってしまうためです。
 変形性関節症というのは、まず関節の軟骨がすり減ってしまい、次にそれを補うために骨が作られるのですが、その骨が正常な場所には作られずに結果として変形してしまうものです。
 関節リウマチの初期症状が「指の関節のこわばり」であるのに対し、変形性関節症は歩き始めや立ち上がった時など、動き始めた時に痛みを感じるのが初期症状です。正座をするときに痛みを感じるのも初期症状の一つです。
 初期段階では動いていると次第に痛みは軽減しますが、病気が進行すると、動いてる最中(歩いてる最中)にも痛みを感じます。
 変形性関節症であるかの検査は、まずその人の歩き方や関節の状態、痛みの度合いなどを診ます。X線撮影も行われ、骨が変形してるか、関節のところの軟骨がどれほどすり減っているかを確かめます。
 治療は症状に応じて様々ですが、関節に水がたまってる場合には水を抜く治療を行ったり、骨を削ったりする治療もあります。
 50代の女性で特に肥満の方に多い疾患なので、肥満の方は減量するのも有効です。

○むくみ
 太ももがむくんでしまっていると、足を折り曲げる作業ができなくなってしまいます。この「むくむ」原因には様々なものがあります。
 むくみには二つのパターンがあって、一つは一過性のもの、もう一つは病気によるものです。
 一過性のものでは、ずっと立ちっぱなしの作業をしていたり、疲労、寝不足、水分・塩分の摂りすぎなどが原因です。軽ければなんともありませんが、ひどくなると正座もできないほど足がむくんでしまいます。また妊娠してる時でもむくみがでます。妊娠してる人でむくみがでる人は3割ほどです。
 なぜ妊娠するとむくみがでるのでしょうか?そもそもむくみがでる原因の多くは、「血行不良によるもの」です。血液は肺などの臓器に栄養や酸素を送り込んでいるのですが、その際、血液の成分の一部(水分の部分であり血漿成分と呼ばれています)が血管からでて臓器にいき、必要な栄養分を送ったら再び血管に戻ってきます。これが正常な血液の動き方なのですが、なんらかの原因により血漿が血管に戻らずに貯留してしまうことがあり、これがむくみの原因になります。
 妊婦の方はホルモンバランスなどが変化しているのもあり、またお腹が大きくなることにより血管が圧迫されて血行不良になり、むくみが起きます。妊娠後期に多いようです。多くは放置しても問題ないのですが、高血圧などが合併すると妊娠中毒症が疑われます。
 また通常のむくみは「同じ姿勢でいないこと」「足をこまめに動かすこと」などを実践していれば防ぐことができます。ビタミンやミネラルが不足していてむくむこともありますので、栄養状態にも気をつけましょう。
 だいたいはこれらに気を配っていれば軽減される一過性のむくみであることが多いのですが、中には病気によるむくみもあります。
 ネフローゼ症候群という腎臓の病気や糖尿病性腎症、ビタミンB1の不足により起きる脚気、クッシング症候群や甲状腺機能低下症などのホルモンの病気などむくみに繋がる病気はたくさんあります。
 長い間に渡ってむくみがおさまらない場合や他にも何か気になる症状がでていたり、また一過性のむくみが起きる原因にまったく心当たりがない場合などはこれらの疾患が隠れている可能性もあるので、病院を受診するようにしましょう。

 以上、正座ができなくなる病気について今回は四つの疾患をご紹介しましたが、それ以外にももちろんあります。すべてに共通することは、せっかく病気が治って正座ができるようになっても、正座をやりすぎてしまうとまた再発してしまう場合があるということです。
 足腰を労って、ほどほどに正座をするのがいいのかもしれませんね。

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