[222]第21回 地方によって呼び名が違う?ユニークな正座の方言


発行日:2022/03/06
タイトル:第21回 地方によって呼び名が違う?ユニークな正座の方言
シリーズ名:WHAT IS 正座!?
シリーズ番号:21

分類:電子書籍
販売形式:ダウンロード販売
ファイル形式:pdf
販売価格:100円

著者:HASHI
イラスト:鬼倉 みのり

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本文

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 “正座”と聞くと、誰もがあの茶道や華道で採られるかしこまった座り方を想像すると思います。それほどまでに正座という言葉と座り方の文化は日本中に浸透しており、小さなお子さんから年配の方まで世代を超えて親しまれています。一方で、正座には地方によって色々な方言があることをご存じでしょうか?

・正座を指す方言は全国で100を超える?

 そもそも正座という言葉が同じ座り方の共通語として使われるようになったのは、明治時代からだと考えられています。それ以前は各地方、各文化圏でそれぞれ違う言葉が用いられていて、その数は100を超えるとか。これを読んでいる方の中にも、「正座と言うよりも○○の方がしっくりくる」という方も多いかもしれませんね。

 ちなみに正座の方言にはある共通点があるようです。それは言葉の最初に「お」が付いたり、丁寧な言葉のものが多いこと。かしこまった場で使われることが多い正座だからこその特徴だと言えるでしょう。



・東北は正座を指す方言が少ない?

 私は長野県生まれなのですが、正座に関する方言はあまり聞いたことがありません。方言でつい表現してしまうものが少なくはないのですが、正座は正座と呼ぶのが当たり前でした。

 しかし調べていくと、長野県でも正座を指す方言があるようです。実際に長野県では正座のことを「おつくべ」「おかしま」「おつんべこ」「おちゃんこ」という方言で表す風習があるとか。私が住んでいた場所ではなかっただけで、地方によっては、今でも正座をそう呼ぶところもあるのかもしれませんね。

 全国の正座の方言を調べてみて一番驚いたのが、東北では正座を方言で表すことがあまりないことです。東北といえば、県外の人間から見ると方言や訛りが強く、テレビでインタビューなどを見ていても言葉が聞き取り切れないという印象がありますが、正座に関しては他の都道府県やエリアよりも方言が少ない傾向にありました。それも、例えば青森県では「ひざを折る」、岩手県では「ひざをつく」など、方言がその土地ならではのユニークなワードではないところも印象的です。

 一方で、近畿や中国地方では県を超えてエリア全体で同じ方言が使われていることがわかりました。例えば近畿地方では「おっちん」「おっちょん」という言葉が正座の方言として使われることが多いようです。一方で、中国地方では「べべちゃんこ」「おちゃんこ」といった言葉が一般的に正座という意味で用いられている傾向にあります。文化圏が異なる人間が聞いたら何なのか分からないような言葉の多くが、実は同じ正座を指す言葉だなんてロマンがありますよね。



・正座の方言を大事にしよう

 いかがでしたか?最近は若者を中心にいろいろと新しい言葉が瞬く間に生まれ、浸透していっていますが、それらはどれも消えるのも早いような気がします。一方で正座に限ったことではありませんが、各地で当たり前のように使われている方言はその地で根付くだけの歴史と思いが詰められているのかもしれません。正座を指す方言は他にもいろいろあるので、興味があるかたはぜひ調べてみてください。



※参考文献
丁宋鐵(2009)『正座と日本人』講談社.

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